力学 質点の静力学 ・一直線上の力のつり合い

力学

質点の静力学

・一直線上の力のつり合い

1 力の大きさ

〔A〕

物体を作っている物質の分量質量という.

キログラム(kg)グラム(g質量の単位である.

質量(mass)m或はMで表わす。

 

「フラスコが100ℊある」というのは「フラスコを作っているガラスの分量が100gある」ということである。

 注意 質量という言葉はわかりにくい。しばらくこのように理解しておき,後に考える。

〔B〕

地球上の物体は地球に引かれている。

物体を地球が引く力を重力といい,

重力の大きさを重さ(重量)という。

重力或は重さ(weight)はW或はwで示す。

同じ場所では,重さは質量に比例する。すなわち

     W=mg (gは比例定数)

 

 図のように,物質の量(質量)が2倍になると(m‘=2m)。地球が引く力の大きさ(重さ)も2倍になる。

W‘=2W)。

注1「Wがmに比例する」はW=kmと書くのが普通であるが,重力の場合は比例定数にkを用いないでg用い,gmとしないでmgで表わす。

注2この比例定数gは,(§8-1)で述べるように,重力加速度とよばれるものである。グラムの「」と混同しないように,次の字体(g)を用いることにする。

§8-1 重力加速度

〔A〕 手にもった物体をはなすと落ちて行き,次第にはやくなる。また投げ上げられた物体は次第におそくなる。どちらの場合も,物体は鉛直下向きの加速度をもって運動する。この加速度は地球が物体を引く力 即ち 重力(gravity)によって生ずる よって,これを

重力加速度といい,普通 g という記号で示す。

 

〔B〕 空気の抵抗や浮力がなければ,どの物体も等しい加速度で落ちていく(実験でわかる)。即ち,重力加速度はどの物体についても等しく,物体の種類・質量・体積に関係しない。

 

〔C〕

重力加速度gの値は,地球上の場所により僅かに違う。

大体9.80m/s2位で,通常の計算ではこの値を用いる。

 

    g=9.80m/s2=980cm/s2

 

標準には,北緯45°の海面上の値9.80665m/s2を用いる。

〔C〕 力の単位にはキログラム重(kg重,w),グラム重(ggwが用いられ,これを力の重力単位という。重力単位のほかにニュートン(N),ダイン(dyn)などの絶対単位も用いられる。

1kg重 は 質量1kgの物体を 地球が引く力の大きさである。

 

 指が物体を引く力Fが100g重であるということは(図b),質量100gの物体を地球が引く力(図aのW)と同じ大きさであるという意味である。

注1 1kgwは1kilogramweight 1キログラムの重さ(1kg)の意味。

注2 物理では,kg質量の単位であり,重さ(力の大きさ)の単位にはkgを用いる。工学では,物理のこの「kg重」を「kg」とよんでいる。

このように使ったkgを重量キログラムという。

 

ガイド1 質量物質の量重さ力の大きさ別のものである。

    質量はkg,重さはkg重。「重」をつけることを忘れるな

 

 質量と重さを混同すると力学がわからなくなる.「質量1kg」「重さ1kg重」と区別して使え。

ガイド2 質量m2kgであれば,mgは重さだから2kgと記せ。

 

〔D〕 力の大きさを測るのにばねが用いられる。引かれると伸び,押されると縮む。自然の長さℓ₀のばねが力Fで引かれたときのばねの長さをℓとすれば,伸びはⅹ=ℓ―ℓ₀

 

ばねが受ける力Fとばねの伸び(縮み)xは比例する。

           F=kx

 

ガイド =k比例すると読めkはばねのもつ定数で,Fやxが変わっても変わらない。だから,xが2倍になればFも2倍になり,上式はFとxが比例することを示している。

 

注1 Force)はFであらわす。Fと書いてあれば,を思い浮かべよ。

 

 質量100gの錘をつるしたときと,指で引いたときとの伸びが共にx=4cmで等しいならば(図b,c),引く力Fは100g重であるさらに力を増して,x'=8m伸びる場合には(図d),引く力F´はFの2倍の200g重である。ばねを押すときも同様で(図e),指の押す力Fは縮んだ長さxに比例する.

注2 あまり伸びが大きくなり,弾性の限界を越すと,比例しなくなる。

 

例題) 12g重の力で引けば3cm伸びるばねに,或る力を加えたところ,自然の長さより5cm短くなった。ばねの端に働く力はいくらか。

 

解く F=kxにおいて,x=3cmのとき

   F=12g重であるから。

   k=F/x=12g重/3㎝=4g重/㎝

 よって,5cm縮んでいるときは

   F=kx=4g重/cm×5cm=20g重…(答)

の力で,押されている。

 

〔E〕 この比例定数kばね定数とよばれ,ばねを1cm(m)伸び縮みきせるに要する力の大きさを示す。

 

N/m,dyn/cm,kg重/m,重/cmなどの単位で表わす。

 

 N/mは「ニュートン毎m」,g重/cmは「g重毎cm」,等と読む。

 

 k=4kg重/cmは「このばねは1cm伸ばすのに4kg重の力を要する」の意味。

 

ガイド 力Fはばねの長さℓに比例する F=kℓ  ではない。

 

   伸び x=ℓ-ℓ₀ に比例する  F=k(ℓ-ℓ₀)である。

 

〔F〕ばねに物体をつるし,地球上の各地で伸びを測ると,同じばね,同じ物体であるのに,伸びが僅かではあるが違う。ゆえに,1つの物体の重さは地球上の場所により違う。

 

 或る金塊をばねにつるし,北極で重さを測ると,伸びは9.83cmであったとすれば,赤道上では,9.78cmになって,少し軽くなる。また富士山の頂上での伸びは,ふもとでの伸びより少し小さく,頂上では少し軽い。月の世界にもっていけば,重さは約1/6となる。

 

〔G〕 しかし,物体をつくっている物質の量は変わるはずがない。そこで,場所が変っても変わることのない量を各物体に考え,質量と名付けたわけである。同じ場所では,物質の量を1/2にすれば,地球が引く力の大ききも1/2となり,重さは質量に比例する。これを

〔1.B〕で        W=mg

で表わした。一つの物体の質量mは場所によって変わらないから,重さWが場所により違うのは,比例定数 g (重力加速度)が場所により違うからである。上の比例関係から,同じ場所では,重さをくらべることにより,質量をくらべることができる。その基準として国際キログラム原器をとり,その質量を1kgと名付け,他の物体の質量はこれと重さをくらべることによりきめる。